会員の自慢話 第10話 『コンピューターによる刀鑑定』

              

  今回の第十話は『コンピューターによる刀鑑定』と題して、豊田市に
 お住まいの伊原 進 さんにご執筆いただきました。

開発の理由
自動車会社在勤中、工程内不良、発生箇所、原因、症状を特定
するソフトの開発に携わった。当時のプログラミング言語はBasic
で動作も遅いが痒い所に手が届き現場からは重宝がられた。
Date入力、集計、グラフ化、要因解析、特定、検索が主でExcelが
発売されるまで主役であった。需要に応じ私がWord (ワード)
Excel (エクセル) PowerPoint(パワーポイント)を開発していれば
世界一の大金持ちだった。(^_^)
このExcelを刀剣鑑定に利用しない手はないと考えた。

刀剣資料の収集
刀剣資料の数ある中で日本美術刀剣保存協会発行の”刀剣美
術”が最良と判断。何故なら写真、押し型、解説、名刀数が他の
資料を圧倒していた。そこで、インターネットオークションで刀剣
美術を収集(1冊\100〜\200で約20年分、240冊)20年分の中
には全く同一の刀が掲載されていたが致し方ないだろう。

刀剣資料の抜粋と製本
1、名刀鑑賞の押し型写真
2、紙上鑑定刀
3、本部定例鑑賞刀(5振り/月)
4、本間薫山先生の”鑑刀日々抄”(最近は未掲載)
5、刀剣に関する研究資料
6、冊子製本(厚さ12センチの参考書完成)
7、1振り毎にNo付与(1040振り登録)、その他の頁は破棄

要因解析とDateマーキング
検索条件の言語の簡素化(記入例)
・堀川物のザングリ--------------------------------ザン

・正義の左右に開いた丁子-----------------------舞茸丁
・元重の直刃調で角張り逆足の刃文は--直調、台形刃、逆X刃
・島田義助の刃文------------------ハサミ形 皆焼---皆
・直刃-----------------------1直、2直、3直、4直と刃巾別
・互の目-----------45互湾、32互湾など互の目の高低を表示
・映り--------------白け、沸、乱れ、棒、段、地斑、鎬筋越え
・時代---------------時代別ソートの用アルファベットを付加、
                更に前中後期判別の1.2.3を付加

・棟-------------三棟、丸棟、角棟、庵棟、急峻棟、並を記入
・長厚------------重厚、元先差とは鎌倉中期、後期、南北朝、
              室町前後期、慶長、寛永、寛文、
元禄など
              元先差の表示

・焼出-----------大阪焼出、直焼出、湾焼出、長焼出、短焼出

ソフト作成(BasicでなくExcelでマクロ未使用)

・フローチャート作成
・刀剣の押し型、写真をスキャナーでの画像の撮り込み
 ファイル化(1000振り余り)


検索項目名(並べ替え、フィルタ用)
1.頁No  2.時代  3.和暦  4.国  5.種類  6.棟形  7.刃長
8.反り寸
  9.重ね 元先差  10.鋒形  11.姿造り  12.鍛
13.焼種  14.匂沸  15.冴
  16.映り種  17.焼高
18.逆足有無  19.刃文  20.焼出  21.帽子入り
  
22.帽子先  23.帽子返り掃け  24.読み  25.刀工銘
26.鏨銘  27.資料名

完成した資料(ランダム入力)
    ● 刀工銘をクリック----

コンピューターで検索する

 問題 この刀の鑑定は?備前長船 元重にたどり着く検索手順(例)


観 察 結 果

@長さ----2尺3寸、磨上げ
A反り----7分半、先は伏さらず
B姿-----尋常で先にも反り加わり、先が細め
C鍛-----板目、流肌交じり、地斑、乱れ映り、
肌立、足葉盛ん
D刃文---3直調、角互の目間延び、X刃、
    台形刃、牙刃、逆がかる
E帽子---尖り掃きかけ



抽出条件
 
備前国長船 元重の太刀となる
(正確な観察眼とData登録済みなら      、  
               100%的中する)    
@姿→ 磨上げ−太刀
A反り→ 反り深く-鎌倉-後期
B姿→ 鎌倉時代-後期
C鍛→ 備前-傍系
D刃文→ 3直調角張る、X刃、逆足
E帽子→ 先尖る・帰り浅い


印刷したチャートを鑑定会で使う
  (時代別、刃文別シートでパソコン未使用)

1、時代が外れると全てが的外れ
2、則重や九州の波平、月山、国包の柾目、直胤のうるみや杢目
  など特徴のある刀工は容易である
3、条件が多く資料から絞り切れない
4、地鉄から時代を判別したいが、小板目、杢まじり、大板目まじり、
  肌立、流れ、地景など同じ表現で判別不可能
5、要因が多く目移りし絞り込めない

今後の進め方
簡素で的確な言語の開発、支部長の言われた”品格”なるものを
理解作成した資料を使いこなす

考察
パソコンで検索、抽出するなら高確率で的中する鑑定会で天位を
頂いた事があったが、観察が正しく明確な特徴があれば便利な
道具である。

諸先輩の言葉に ”名刀は遠くから見ても判る” ”ナカゴを見れば
判る” は深い言葉であるが、名刀鑑賞の機会が少なく刀剣鑑定
の難易度の高い要因となっている。

                              名古屋支部 伊原 進
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